前回は、相次相続控除や相続分の放棄、譲渡についてお話ししました
前回のブログ 相続手続きについて 相次相続控除 相続分の放棄、譲渡編
本日は再度取り上げていた自筆証書遺言について、より詳しく解説していきたいと思います。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、その名のとおり遺言者がすべて自筆で作成する遺言書です。
遺言書本文は自筆である必要がありますが、財産目録についてはパソコンでの作成や、通帳のコピー・不動産登記簿謄本のコピーなどを添付することも可能です。
ただし、注意点として以下の点を押さえておきましょう:
- 財産目録は遺言書本文とは別のページに分けて作成する
 - 財産目録をパソコンで作成した場合やコピーを添付する場合は、各ページに自署と押印が必要
 - 訂正がある場合は、訂正箇所に二重線・押印・訂正内容の記載を忘れずに
 
ルールに則っていないと、遺言書が無効になる可能性もありますので、正しく作成することが大切です。
自筆証書遺言のメリット・デメリット
【メリット】
- 作成費用が無料
 - 遺言の内容が遺言者本人しか知らないため、プライバシーが守られる
 - いつでも書き直しや撤回が可能
 
【デメリット・注意点】
- 法的条件を満たしていないと無効になる恐れ
 - 遺言書の紛失や偽造、発見されないリスク
 - 保管制度を利用しないと、家庭裁判所での「検認」手続きが必要
 
押印は認印でも構いませんが、実印で押印し、印鑑登録証明書を添付することをおすすめします。
遺言書によってできること
遺言書がない場合、相続は法定相続人が法定相続分に従って行います。
しかし遺言書があると…
- 相続人以外(孫、内縁の配偶者、お世話になった人など)に財産を渡すことが可能
 - 法定相続分とは異なる遺産の分け方を指定できる
例:本来「配偶者1/2、子2人が1/4ずつ」の相続 → 「配偶者8割、子2人に1割ずつ」など
※ただし子には「遺留分」があるため、完全にゼロにすることはできません 
また、遺言書を使って以下のことも可能です:(前回書いていなかったこと)
- 祭祀主催者(お墓・法要の管理者)の指定
 - 非嫡出子の認知
 
遺言書がある場合、基本的に遺産分割協議は不要です。万が一、遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、協議は無効になり、遺言書が優先されます。
ただし、遺言書に「遺産分割協議をしてはならない」という文言がなければ、相続人全員の合意で協議を行うことも可能です。
作成した遺言書を見つけてもらうには?
遺言書をせっかく作成しても、相続人がその存在を知らなければ意味がありません。
以下の方法で、遺言書の存在や保管場所を伝える手段をとりましょう。
- エンディングノートを作成し、併せて記録する
エンディングノートのブログ 遺言書について エンディングノートについて - 終活登録事業を利用する(例:大和市の「ツナグ」制度)
大和市の終活登録事業のブログ 大和市での終活登録事業の取り組み
大和市終活登録事業「ツナグ」 大和市終活登録事業「ツナグ」リーフレット - 自筆証書遺言保管制度を活用し、通知を希望する
 
自筆証書遺言保管制度とは?
2020年7月から始まった法務局による遺言書の保管制度です。
【主な特徴】
- 遺言者本人しか手続きできない
 - 登録費用は3,900円
 - 保管された遺言書は紛失・偽造のリスクを回避できる
 - 検認の手続きが不要
 
【作成時の注意点】
保管制度に提出する遺言書には余白のルールがあります:(前回書かなかったこと)
| 余白の位置 | 必要な幅 | 
|---|---|
| 上 | 5mm以上 | 
| 右 | 5mm以上 | 
| 下 | 10mm以上 | 
| 左 | 20mm以上 | 
また、ページ番号・訂正などは記載せず、押印はスタンプ印を避け、できれば実印を使用しましょう。
遺言書の存在を相続人に伝える通知制度
保管制度を利用することで、以下のような通知方法があります:
① 関係遺言書保管通知(自動通知)
相続人が法務局で遺言書の閲覧や証明書を取得すると、他の相続人にも自動で通知されます。
② 遺言者指定通知(任意の通知)
遺言者が生前に指定した最大3名までに対して、死亡確認後に法務局が遺言書の存在を通知します。
最後に
遺言書は、作成しても法的に無効であれば意味がありません。
行政書士はら事務所では、自筆証書遺言の作成サポートを行っております。
「書き方がわからない」「間違えて無効になりたくない」「誰に相談すればいいか不安」など、些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。
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次回も引き続き、遺言書に関する内容をお届けします。
最後までお読みいただきありがとうございました。