相続について⑤

こんにちは。
これまで数回にわたり、相続手続きの基本的な流れについてご紹介してきました。

今回は、私が実際に相続手続きをお手伝いしてきた経験から、注意すべきポイント時間がかかりやすい場面について、より深く掘り下げていきたいと思います。


STEP1:遺言書の有無を早めに確認しましょう

相続が発生した際に、まず確認すべきことが遺言書があるかどうかです。
なぜなら、遺言の有無によって、その後の手続きの流れが大きく変わるからです。

遺言書がない場合

相続人全員で協議(遺産分割協議)を行い、遺産の分け方を決める必要があります。
この場合は、STEP1〜STEP6までの通常の流れで進めていきます。

遺言書がある場合

原則として遺産分割協議は行わず、遺言執行者(※後日解説します)が内容に基づいて手続きを行います。

相続手続き中に遺言書が見つかったら?

実際の現場では、相続手続きを進めている最中に遺言が発見されることもあります。
この場合、遺産分割協議よりも遺言書が優先されます。

つまり、遺言があることがわかっていれば、そもそも協議自体が不要だった…ということにもなりかねません。

そのため、遺言書の有無はできるだけ早く確認することが大切です。
遺言書には「検認」などの法的手続きが必要な場合もあり、期限もあるため、注意が必要です。


STEP3:相続人と財産の調査で時間がかかるケース

相続人の調査でよくある「想定外」

被相続人の戸籍を確認していく中で、次のようなケースに出会うことがあります:

  • 知らなかった相続人が出てきた
  • 疎遠な甥・姪が相続人に含まれていた
  • 相続人が海外に住んでいる、または被相続人が外国籍だった

このような場合、連絡や調整に時間がかかり、手続きが一時停止することも。

また、相続でトラブル(紛争)になってしまった場合は、弁護士でなければ対応できない点にも注意が必要です。

財産の調査は「見つけること」がスタート

不動産や自動車などは比較的把握しやすい財産ですが、見落とされがちなのが以下のようなものです:

  • 複数の銀行口座やネット銀行
  • 株式・有価証券・仮想通貨など

実際には、遺品整理中に通帳や契約書が見つかって、後から気づくことも多いです。
そのたびに手続きが必要となるため、結果的にかなりの時間がかかることもあります。


STEP5:遺産分割協議と協議書の作成

遺産分割協議は「全員で」行う必要あり

遺産分割協議とは、相続人全員が参加して、誰がどの財産を受け取るかを話し合うものです。

ポイントは、一人でも欠けた状態で行われた協議は無効になるということ。
そのため、相続人全員をしっかり把握しておく必要があります。

また、相続財産の全体像がつかめていないと、適切な協議ができません。
早い段階での財産調査がとても重要です。

協議が終わったら「協議書」の作成を

協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書として書面にまとめます。

この協議書がないと、不動産の名義変更や金融機関での相続手続きが進められないこともあります。
スムーズに手続きを進めるためにも、協議が終わったらすぐに作成するのがおすすめです。

行政書士でも協議書の作成をお手伝いできますので、ご相談ください。


STEP6:名義変更や相続税の申告も時間がかかります

最後に、実際に財産を名義変更したり、相続税を申告したりする段階ですが、ここも想像以上に時間がかかります。

特に金融機関での相続手続きは、

  • その金融機関独自の書類が必要
  • 遺言書や協議書の有無によって必要書類が異なる

など、ケースバイケースでの対応が求められます

戸籍謄本の提出が多い → 法定相続情報一覧図が便利!

金融機関だけでなく、不動産登記や保険会社との手続きでも、戸籍謄本を何度も提出することになります。

そこで便利なのが、法定相続情報一覧図です。

  • 戸籍をもとに相続関係を一覧化した図
  • 法務局で無料で作成・交付可能(5年間保管)
  • 銀行・登記・保険などさまざまな手続きに利用できる

行政書士でも作成可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。


おわりに:相続手続きは準備がすべて

今回ご紹介したように、相続の手続きには想定外のことが多く、思わぬところで時間がかかることがあります。
中でも「戸籍の収集」や「財産の把握」など、最初のステップでつまずくと後の流れに影響してしまいます。

そんなときは、行政書士など専門家にご相談いただくことで、スムーズに進めることができます。
また、法定相続情報一覧図の作成は、後々の手続きをラクにする大きな一歩になります。

次回は、「遺言書」に関して詳しくご紹介します。
どんな種類があるのか、どうやって書くのか、実際に役立つケースはどんなときか…など、実務視点でわかりやすく解説予定です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!