遺言について②

遺言書

遺言の種類① 自筆証書遺言について

前回は遺言の大まかな種類について触れました。
今回はその中でも「自筆証書遺言」について、詳しく解説していきたいと思います。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が自らの手で書き残す遺言書のことです。
氏名・日付・内容を自筆で記載し、押印することが必要です。

以前は全文を手書きにする必要がありましたが、現在は「財産目録」部分のみパソコンで作成したり、通帳のコピーを添付する方法も認められています。ただし、本文(遺産の分け方など)は必ず自筆で書く必要があります。

また、押印は実印でなくても認印で構いません。

遺言書を作成することで、相続人以外の方へ財産を残すことも可能になります。例えばお世話になった友人や孫に財産を残したい場合には、自筆証書遺言を作っておくことが重要です。


作成時の注意点

自筆証書遺言には厳格なルールがあります。

  • 必ず自筆で署名・押印すること
  • 財産の内容を特定できるよう、正確に記載すること
  • 「相続させる」「遺贈する」を正しく使い分けること 相続人には相続させる、相続人以外には遺贈する

📌 記載例

  • に下記不動産を相続させる(登記簿謄本の記載どおりに記入)
  • に下記の預貯金を遺贈する(〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇)

不動産は登記簿謄本を参考に正確に書き、銀行預金は銀行名・支店名・口座番号・預金種類を明記しておくと安心です。


予備的遺言

遺言で財産を受け取る予定の人が先に亡くなってしまった場合、その部分の遺言は無効になります。

そのような場合に備えて「予備的遺言」を書いておくと安心です。

📌 記載例

  • 妻に不動産を相続させる。万が一、妻が先に亡くなっていた場合は長男に相続させる。

こうした一文を加えることで、遺言の効力を確実なものにできます。


遺言執行者の指定

遺言を実際に執行する役割を担うのが「遺言執行者」です。

遺言で指定されていない場合は、家庭裁判所で選任してもらう必要があり、手続きが煩雑になります。スムーズに相続を進めるためにも、遺言執行者はできる限り指定しておきましょう。


付言(最後のメッセージ)

遺言の最後に「付言」として、家族への感謝や思いを残す方も多いです。

法的な効力はありませんが、家族の心を和らげたり、相続争いを防ぐ効果も期待できます。ぜひ活用をおすすめします。


自筆証書遺言を見つけた場合の注意点

もし被相続人が自筆証書遺言を残していた場合、**家庭裁判所での「検認」**が必要です。

保管制度を利用していない遺言書を勝手に開封すると、過料(罰金)が課される可能性があるため注意してください。


自筆証書遺言保管制度

令和2年からスタートした制度で、法務局に遺言書を保管してもらうことができます。

この制度を利用すれば、偽造や紛失の心配もなく、検認の手続きも不要です。安心して遺言を残す方法のひとつといえるでしょう。


行政書士にできること

行政書士は、自筆証書遺言の作成をサポートすることができます。

  • どのように書けばいいのか
  • どんな資料を準備すべきか
  • 法的に有効な形式になっているか

といった点を確認し、安心して作成できるようお手伝いします。


次回は「公正証書遺言」について詳しく解説いたします。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。