遺言の種類① 自筆証書遺言について
前回は遺言の大まかな種類について触れました。
今回はその中でも「自筆証書遺言」について、詳しく解説していきたいと思います。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が自らの手で書き残す遺言書のことです。
氏名・日付・内容を自筆で記載し、押印することが必要です。
以前は全文を手書きにする必要がありましたが、現在は「財産目録」部分のみパソコンで作成したり、通帳のコピーを添付する方法も認められています。ただし、本文(遺産の分け方など)は必ず自筆で書く必要があります。
また、押印は実印でなくても認印で構いません。
遺言書を作成することで、相続人以外の方へ財産を残すことも可能になります。例えばお世話になった友人や孫に財産を残したい場合には、自筆証書遺言を作っておくことが重要です。
作成時の注意点
自筆証書遺言には厳格なルールがあります。
- 必ず自筆で署名・押印すること
- 財産の内容を特定できるよう、正確に記載すること
- 「相続させる」と「遺贈する」を正しく使い分けること 相続人には相続させる、相続人以外には遺贈する
📌 記載例
- 妻に下記不動産を相続させる(登記簿謄本の記載どおりに記入)
- 孫に下記の預貯金を遺贈する(〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇)
不動産は登記簿謄本を参考に正確に書き、銀行預金は銀行名・支店名・口座番号・預金種類を明記しておくと安心です。
予備的遺言
遺言で財産を受け取る予定の人が先に亡くなってしまった場合、その部分の遺言は無効になります。
そのような場合に備えて「予備的遺言」を書いておくと安心です。
📌 記載例
- 妻に不動産を相続させる。万が一、妻が先に亡くなっていた場合は長男に相続させる。
こうした一文を加えることで、遺言の効力を確実なものにできます。
遺言執行者の指定
遺言を実際に執行する役割を担うのが「遺言執行者」です。
遺言で指定されていない場合は、家庭裁判所で選任してもらう必要があり、手続きが煩雑になります。スムーズに相続を進めるためにも、遺言執行者はできる限り指定しておきましょう。
付言(最後のメッセージ)
遺言の最後に「付言」として、家族への感謝や思いを残す方も多いです。
法的な効力はありませんが、家族の心を和らげたり、相続争いを防ぐ効果も期待できます。ぜひ活用をおすすめします。
自筆証書遺言を見つけた場合の注意点
もし被相続人が自筆証書遺言を残していた場合、**家庭裁判所での「検認」**が必要です。
保管制度を利用していない遺言書を勝手に開封すると、過料(罰金)が課される可能性があるため注意してください。
自筆証書遺言保管制度
令和2年からスタートした制度で、法務局に遺言書を保管してもらうことができます。
この制度を利用すれば、偽造や紛失の心配もなく、検認の手続きも不要です。安心して遺言を残す方法のひとつといえるでしょう。
行政書士にできること
行政書士は、自筆証書遺言の作成をサポートすることができます。
- どのように書けばいいのか
- どんな資料を準備すべきか
- 法的に有効な形式になっているか
といった点を確認し、安心して作成できるようお手伝いします。
次回は「公正証書遺言」について詳しく解説いたします。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。