前回に続き、今回も「自筆証書遺言」の詳細について解説していきます。
前回のブログ 遺言書について 自筆証書遺言 詳細編
遺言書は、一度作成すれば終わりではなく、内容の見直しや将来の変化にも対応していく必要があります。今回は「予備的遺言」「遺留分侵害額請求」「遺言執行者」など、自筆証書遺言の重要なポイントを整理していきます。
予備的遺言とは?
予備的遺言とは、遺言で財産を受け取る予定の人(受遺者)が、遺言者よりも先に亡くなった場合に備えて、次の受遺者を指定することです。
例えば以下のように記載します。
- 「〇〇市の土地は妻に相続させる。もし妻が先に亡くなっていた場合は長男に相続させる。」
- 「〇〇銀行〇〇支店の口座(口座番号〇〇〇〇)は妻に遺贈する。妻がすでに亡くなっている場合は長女に遺贈する。」
このように予備的遺言を記載しておくことで、遺言の一部が無効になるリスクを減らすことができます。
なぜ必要なのか?
受遺者がすでに亡くなっていた場合、その部分の遺贈は無効となり、原則として法定相続人による相続に切り替わります。トラブルや想定外の相続を防ぐためにも、予備的遺言の記載はおすすめです。
遺留分侵害額請求とは?
遺言書によって、法定相続人以外の方へ財産を遺贈することは可能ですが、ここで注意すべきなのが「遺留分」です。
遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人に保障されている最低限の相続分のことです。被相続人がどのような遺言をしていても、この遺留分は侵害できません(※兄弟姉妹には遺留分はありません)。
遺留分の割合:
- 配偶者や子がいる場合:遺産の 1/2
- 直系尊属(親など)のみの場合:遺産の 1/3
- 兄弟姉妹のみの場合:遺留分 なし
遺留分侵害額請求とは?
遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
- 相続開始・侵害を知った日から 1年以内
- 相続開始から 10年以内(絶対期限)
この請求は、金銭による支払いしかできません。
注意点
以下のようなケースでは、遺留分の問題が起こりやすくなります。
- 法定相続人以外(例:孫や内縁関係の方)へ財産を遺贈する
- 特定の相続人に偏った配分をする
遺言書作成時には、法定相続人の遺留分に十分配慮しましょう。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人のことです。遺言の中で指定することもできますし、指定がない場合は家庭裁判所に選任を申し立てることができます。
遺言執行者の役割
- 遺産分割の実行
- 預貯金の名義変更
- 不動産の登記変更
- 子の認知や相続人の廃除の手続き(執行者がいないとできない)
遺言執行者になれない人
- 未成年者
- 破産者
代理人を選任することも可能なので、事前に信頼できる方や専門家に依頼しておくと安心です。
自筆証書遺言作成の流れと注意点
- 意思能力の確認
作成時点で意思判断能力があり、15歳以上である必要があります。 - 自筆で作成する
全文を自筆で書く必要があります(※財産目録はパソコンでの作成も可能ですが、署名・押印が必要)。 - 財産の記載ミスに注意
通帳のコピーや不動産登記簿謄本を用意して、正確に記載しましょう。 - 祭祀主催者の指定
墓や法事の管理者も遺言書で指定できます。 - 押印はなるべく実印で
実印+印鑑証明書を添付することで、本人確認の信頼性が高まります。 - 予備的遺言の記載を忘れずに
無効リスクの軽減になります。 - 遺言執行者を指定する
トラブル防止、手続きの円滑化につながります。 - 遺留分に配慮する
トラブルを避けるため、法定相続人の権利にも注意しましょう。 - 遺言書の存在を知らせる
エンディングノートに記載するなどして、相続人にわかるようにしておきましょう。
エンディングノートのブログ 遺言書について エンディングノートについて - 自筆証書遺言保管制度を活用する
法務局で保管すれば、偽造・改ざんのリスクがなく、家庭裁判所での検認も不要です。
利用料:3,900円/遺言者本人の出頭が必要です。 - 遺言書は撤回・書き直し可能
内容を変更したい場合は、新たに作成すれば、最新のものが有効になります。
まとめ
本日も、自筆証書遺言の重要なポイントについてお伝えしました。
細かいルールはありますが、正しく作成すれば確かな法的効力を持つ遺言書になります。また、遺言は「万が一のため」だけでなく、円満な相続を実現するための大切な手段でもあります。
作成には意思能力が必要となるため、早めに検討することが重要です。
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次回予告
次回の内容はまだ未定ですが、引き続き、皆さまの生活に役立つ情報をお届けしてまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました!